bibliophilia ? alcoholic ?

The Days of Whiskies and Books

阿蘭陀 って?


こんなのを読みはじめた。



獏せんせいによる 平賀源内 の物語。

江戸期の天才というか、奇才?鬼才?
本草学者、というより、日本には稀な 「 博物学者 」。
僕らの世代としては、デフォルトで
NHKドラマ 『 天下御免 』 (1971) の
山口崇の飄々とした姿が目に浮かぶのだが
(ちなみに杉田玄白坂本九
[ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E4%B8%8B%E5%BE%A1%E5%85%8D ]
奇矯な天才をうまく演じていた。

平賀源内の出生は
享保13年(1728年) - 安永8年12月18日(1780年1月24日)、
宝暦2年(1752年)頃に1年間長崎へ遊学し、
本草学とオランダ語、医学、油絵などを学んだとされる。(Wiki)
1761年(34歳)貝の図鑑作成とあるが、
これは藩主の命を受けて作成した 『 紀伊物産志 』 を指したものか?

本書の巻頭で獏先生は、
物語の鍵になる 『 おもろさうし 』 を挙げるとともに
杉田玄白の 『 蘭学事始 』 の一節を引用している。
それによると源内は出島で
オランダ人カピタン カランスに 『 本草綱目 』 を贈った替わりに

『 ヨンストン 禽獣譜 』
『 ドトニュース 生植本草
『 アンボイス 貝譜 』
を贈られたとある。

言わずもがな
『 ヨンストン 禽獣譜 』
→ Jonston, J., Historiae naturalis de quadrupedibus libri, cum aeneis figuris, Johannes Jonstonus,... concinnavit (J. J. Schipperi, Amsterdam, 1657).

『 ドトニュース 生植本草
→ R. Dodonaeus, Cruydeboeck. 1554. (1. Edition, 2. Edition, 1563)
本書でも触れられている、源内が発案し後にオランダ通詞吉雄耕牛の手による
和訳手稿本 『 独独匿烏斯本草アベセ類聚 』 が
伊藤文庫の一冊として ndl に所蔵されている。
[ http://www.ndl.go.jp/nichiran/data/R/044/044-005r.html ]

『 アンボイス 貝譜 』
→ G.E. Rumphius, Amboinische Raritäten-Kammer oder Abhandlung von den steinschaalichten Thieren welche man Schnecken und Muscheln nennet. Kraus, Wien 1705.
いわずと知れた 『 紅毛貝譜 』

にあたる。

[ https://www.google.com/search?q=%E3%83%89%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9+%E7%94%9F%E6%A4%8D%E6%9C%AC%E8%8D%89&ie=utf-8&oe=utf-8&client=firefox-b ]

え、源内先生、ルンフィウス持ってたと?!
平賀源内は多くの海外の博物書を収集していたとされるが
その蔵書の行方は?

国会図書館をちょっとほじくってみたら
Rumphius は、初版、2版とも国会図書館に所蔵されているようなのだが
書誌を見ても来歴は不明。
で、さらにほじっていたら、変なものを引っ掛けた。

阿蘭陀貝盡
[ https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000007279368-00 ]



Holland ではなく、New Holland のほう、
なんと、Rumphius の写本。
書誌情報の詳細を見ると、

 出版年 不詳
 大きさ、容量等 1軸 ; 27.7cm
 注記 書名は題簽による
 注記 曽我二直庵の2印あり
 注記 ルンフィウス著 「 アンボイナ珍品集成 」 (1705年刊) 中の図版を転写したもの
 注記 原タイトル: D'Amboinsche rariteitkamer
 注記 装丁 : 和装



曽我二直庵の作画期間は17世紀前半から半ば過ぎとされるから、
この本の作者が曽我二直庵とすると時代が合わない。
原書の出版年を考えると、この写本も、平賀源内の時代のものか。
この時代、Rumphius が日本、お江戸に何冊あったか?
源内の蔵書の写本、なんてことがあったりすると、
などと、妄想して楽しい。